長かったレースもようやく終盤、172kmのWeisshornから200km地点のゴール・Davosまでのレポートです。
Weisshornからは地獄の1000m強の下りが待ち受けています。
まずは砂利道を下ってたまに登ってまた下るという行程を繰り返していきます。
山頂からほどなく175km地点の看板がお目見えしました。
緩やかな尾根伝いのトレイルを下っていると、牛のかたまりに遭遇。牛がぎゅーぎゅーしています。
ちょっとそんな光景にほっこりしながらも黙々と先に進みます。
トレイルから砂利道に戻り、途中ロープウェイの駅やレストラン?の側を通り抜けてしばらく進むと樹林帯の中へ。
ここまで来ると次のエイドArosaの街はもうすぐです。
樹林帯に入ってすぐに180km地点の看板もありました。
樹林帯のトレイルからロープウェイの下を鋭角に曲がり下りるとArosaの街に到着です。
綺麗な湖(オーバー湖)と鮮やかなフラッグが出迎えてくれます。
少し街中で道に迷いつつも、湖畔沿いの道を進みエイドへ向かいます。
街中の体育館のような場所が181km地点Arosaのエイドです。
15日午後2時、スタートして54時間が経過していました。
このエイドでもレース中お世話になりまくったパスタ&ポテトをがっつきます。
しっかりとしたエイドはここが最後みたいなので、今更ながらパスタ&ポテトを撮影。
このセットには大変お世話になりました。
エイドでしっかり腹ごしらえを済ませた後は最後の20kmに出発します。
あれだけ遠かった200kmの旅も残すところ1/10と思うと感慨深いものがあります。
Arosaの街を出たら線路沿いの道を少し歩いて、踏み切りもない箇所でわたります。
日本だったら炎上騒ぎになるかもしれないですが、線路に寝そべるヨネッチさん。Stand by meの世界です。
線路を渡ってすぐの湖あたりで雨が再び降り始めたので、レインウェアを装着。
あまり気温も高くないので、レインウェアを着ても特に支障はありません。
ここからは樹林帯の緩やかな丘を黙々と登っていきます。
ただただ黙々と足を進めると185km地点の看板が。
ここらへんで道中抜きつ抜かれつを繰り返していた国籍不明のMarioさんに遭遇した覚えがあるようなないような。
そんなこんなで樹林帯を抜け少し下って沢まで下りてきました。
ここから数十m程度の登り、これまで登ってきた長大な登りとは比べ物にならない短さですが、今の自分にはそれすら堪えます。
草原に出てからは雨も強くなりますが、動いている限りは寒さはどうにか堪えられます。
草原の中の人気のない小さな集落?には野ざらしの私設エイドっぽいなにかが。人もいなけりゃ雨よけもない、ワイルドなエイドで、小さい水差しとコップが置いてありました。
さすがにワイルド過ぎて手をつけれなかったですが、今大会最初で最後の私設エイドっぽいなにかでした。
再び草原を突き進むとラスト10kmの看板が。
ようやくここまで来たかと思うと胸が熱くなります。
草原を抜け足場の悪い沢沿いに標高を落としていくと谷間の川沿いにいくつかの家が。
あそこが最後のエイドJatzだと思ったら、あら残念。関係ないお宅のようで、濁流の川にかかる橋を渡って砂利道を登り返していくことに。
そこから少し進んだところに本当にラストのエイドJatz1,831mに午後5時48分に到着です。
ここで少し温かい飲み物とパンを頂いたら今度こそ最後の500m登り、Strelapass2,346mを目指します。
淡々と川沿いのトレイルを登って登ってたまに下って登っていきます。
沢を渡渉してからは九十九折に一気に標高を上げていきます。
ここを登りきれば後は下るだけと自分に言い聞かせて、ただただ最高点を目指して3人で登っていきます。
そして午後7時10分、195km地点でもあるStrelapass2,346mのコルに到着です。
あいかわらず周囲はガスっていますが、泣いても笑ってもあと5kmまでやってきました。
このラスト5kmの表示を見て、なんかとても感動したのを覚えています。
とはいえど旅は最後まで油断は禁物です。
ゴールのDavosまでは5kmで約800mほど標高を下げなければなりません。
途中地元のランナーが練習でしょうか、犬を連れて走っていました。
普段からこんな最高のトレイルを走れるなんてうらやましい限りです。
このころには嬉しいことに雨脚も弱まり、ガスも切れて少し明るくなってきました。
雲の切れ間からはゴールのDavosが垣間見えます。山の神様からの嬉しいプレゼントです。
トレイルを下ると一旦砂利道に出てきます。ここからは斜度も緩やかになり、樹林帯の遊歩道のようなところを下っていきます。
Davosを見下ろす山腹のレストランの側までやってきました。
このレストランとDavosの街はロープウェイで一駅の距離にあるくらい町が近づいてきます。
とうとう雲の下までやってきました。Davosの街も目前です。
泊まったホテルの側の教会も間近に見えます。
遊歩道を抜けるとDavosの街に入ります。狭い石畳の坂を下ればゴールは目前です。
しかし日曜の夕方というのもあるんでしょうが、ほとんど人気がありません。
レース全体を通じてそうでしたが、この地元の町ですらこんなレースがあっていることを認識しているのか、と思うくらいギャラリーはいません。
ギャラリーがいてもいなくても、ゴールはゴール。
ただただ長く厳しく果てがないと感じた200kmの旅の終わりです。
坂を下り、プロムナードを少し歩けば60時間前に出発した広場が見えてきました。
そして15日午後8時18分、エースケさん、ヨネッチさんと肩を組んで3人で並んでゴール。そしてノンアルビールで乾杯。
ただ今回のこのレース、正直一人ではどこかでリタイアを選択していたかと思います。
完走率50.5%(出走184人中93人完走)という数字が示すとおり時間・距離・天候など多くの試練が待ち構え、多くの選手がリタイアする厳しい大会でした。
そんな中、履きなれない靴、十分でない装備、途中で止める理由はいくらでも考え付きます。
途中でくじけてリタイアしたくなる自分を食い止めてくれたのが快く海外遠征に行かせてくれた妻であり、レース前からずっと応援してくれた地元の友人であり、長い間ご一緒させてもらったエースケ・ヨネッチペアであり、レース前から手助けしていただいたM氏、途中のエイドで物資を分けてくれたI氏、その他レース中お会いした多くの選手やスタッフの皆さんです。
Swiss Irontrail 200km、累積標高11,440mのこの大会、アルプスの素晴らしい景色と多くの出会い、そして厳しい自然を味わうことが出来ました。
また走りたいかと問われると、正直Noという回答になりますが、大会そのものは非常に挑戦しがいのあるレースでした。
これからまた精進し、いつの日かこの大会に匹敵し、超えるくらいの挑戦をしたいですね。